「私がジャニヲタなんて・・・」と思っていた頃の話
先日、大学時代の同級生から突然LINEがきた。
ずっと連絡をとっていなかったためとても驚いた。「どうしたの?」と聞くと、
「私さ、『パパジャニWEST』みてジャニーズWESTにはまっちゃった!ゆきが好きだったの思い出してさー!」
とのこと。
ものすごく嬉しかった。
ジャニーズWESTの魅力がレギュラー番組を通して伝わっていることを実感できし、私がファンであることを覚えていて、真っ先に連絡をくれた。大学生の頃から、自己紹介などの自分を表現する場があるときには必ず「ジャニーズWESTが好きです」と言ってきた甲斐があった。ちゃんと好きなことを声に出してアピールしてきてよかったなと思う瞬間だった。
今でこそアホみたいにジャス民であることを公言している私だが、WESTを好きになりたての頃はジャニヲタになったことを隠そうと必死だった。
そもそも私は2次元ヲタクで、中学・高校の頃は『物語シリーズ』や『ラブライブ!』などのかわいい女の子が登場するようなアニメを中心に見ていた。別に男性が嫌いだったわけではないし、レズビアンでもないのだが(当時彼氏がいた)思春期だったのか、なんとなく男性を怖いと思って避けていた。
2次元は現実逃避をするには最適だった。作り上げられたキャラ設定にストーリー。完璧な世界観を持っているため、裏切られることがない。なにより、かわいらしい美少女キャラクターは癒しをくれる。現実を受け止められない日々が続いたあの頃の私には、創作された世界が唯一つらいことを忘れられる場所だった。
その当時、私がジャニーズに対して抱いていた印象は、「ジャニーズなんてカッコつけてて逆にカッコ悪い」である。嵐やSMAPに関しては、国民的アイドルで知らない人の方が少なかったし、レギュラー番組もよく見ていて面白いと思っていたから格別だった。だが、基本的にはジャニーズは私から一番遠い存在だという認識だった。
ちなみに、当時のジャニーズWESTへの印象で覚えているのが、Mステで『バリハピ』を披露していたWESTを見て、「え、この人たち本当にジャニーズ?なにこの幼稚園のお遊戯みたいなダンス。ダッサ。」とこぼしたこと。
・・・今思うと本当にあの頃の自分をぶん殴りに行きたくなる。あの頃の私に伝えたい、あんたは将来そのお遊戯会みたいなダンスを一緒になって楽しく踊ってるよと。
さて、そんな2次元しか愛せない日々を送っていた私にも転機は突然訪れる。
母親が山Pにはまったのである。今まで旬のイケメン俳優にしか興味を示さず、すぐに次の人に乗り換えていた母親が、まさかジャニーズのガチファンになるとは私の中でかなりの衝撃だった。
どんどんのめりこんでいく母親を、初めはバカにしていた。それは「ジャニーズ=ナルシルト集団」「ジャニーズファン=キャピキャピのリア充勝ち組女子」というイメージが私の中で強くあったからだと思う。さらに、ジャニヲタは二次元ヲタクを下に見ているという偏見もあり、敵視していた。
ある日、母親に「見て!この山Pかっこいい!」とアイドル誌を見せられた。「はいはいかっこいいねー」といつものように流し、なんとなく他のページもペラペラとめくっていたら、あるページで手が止まった。
その人を見た途端、なぜか目を奪われてどうしようもなくなった。
このまま見ていると危険だと察知し、すぐに雑誌を閉じた。その後、何事もなかったように振舞ったが、頭の隅であの人の影がチラついていた。
それからすぐに年末が来て、年越しにジャニーズカウントダウンライブを見たいと母親がいうので、それに付き合わされていた。
・・・といいつつも、どこかであの人が出てくるのではないか、と期待していたのかもしれない。
そして見つけた。ジャニーズWEST。そのグループの中で彼は歌っていた。
その笑顔に今度こそ目が離せなくなった。彼のことが知りたくて溜まらなくなった。
カウコンが終わってからもずっと彼のことが気になっていた。でも、私は自分がジャニーズを好きになったかもしれないという事実を受け入れることができず、頭の中に現れる彼の残像を無理やり振り払って、何事もないように過ごしていた。
だが、抑えていた気持ちはある日突然爆発した。テストが近いというのに彼のことが気になりすぎて全く勉強が手につかない。当時、成績重視な真面目ちゃんだった私にとって、それはとても致命的なことだった。
「気になる、気になりすぎる・・・。よし、名前だけ、名前だけ調べてみよう」
と、『ジャニーズWEST』と検索したのがきっかけで、私は一生抜けられない沼にハマることになる。
まず、笑顔がかわいい彼の名前が「重岡大毅」であることを知った。
「重岡くんはどんな人なんだろう?」と動画を検索してみると、でてきたのは少クラの名物コーナーだった『ジャニーズWESTの世界昔話』。見てみるとめちゃくちゃ面白い。ボケもツッコミも絶妙で、何よりメンバー同士のチームワークが抜群で、安定感のあるとてもクオリティの高い笑いを提供していて驚いた。
「え、これジャニーズなの?」
私がイメージしてたジャニーズ像とは全く違った引き出しを持ったジャニーズWESTにどんどん引き込まれて、動画を見るのが止められない。
面白いコントをしたかと思えば、とてつもない歌唱力でバリバリのカッコイイ歌を歌いあげたり、デビューするときのつらい過去を乗り越えた経験を持っていたり、気が付けば重岡大毅だけでなく、他のメンバーのことも好きでたまらなくなっていた。
テスト勉強に集中できるようにジャニーズWESTについて調べたはずなのに、まったくの逆効果だった(笑)
テストの問題を解き終わって、少し時間ができるとやっぱりジャニーズWESTのことで頭がいっぱいになり、まるで恋をしているときのように胸がぎゅーっと締め付けられた。
・・・やばい。これは完全にハマってしまった。
あんなに敵視していたジャニヲタに私はなってしまった。こんなにもあっさりと。
でも、こんな二次元ヲタクだった私が、急に手のひら返したようにジャニヲタになったと知ったら周りの人はどう思うだろう。こんな地味でブスな私はジャニヲタの仲間に入れてもらえないかもしれない。母親のことも散々バカにしてしまった。今更どの面下げてジャニヲタになったと宣言すればいいのだろう・・・。
今思えばこんなに思いつめることでもないのだが、当時は今まで自分が経験したことのない領域、しかも今まで敵視していた世界に足を踏み入れることにびびっていたのだと思う。
私はジャニーズWESTを好きになったことを周りに隠すことにした。
ただ、好きなものに囲まれて生活したい私にとってはそれはとてもしんどいことだったため、「せめてスマホのホーム画面だけは重ちゃんにしよう」と決めて、人に見られないよう気を付けながら推しの姿を楽しんでいた。
ある日、私がスマホをさわっていると、友達が急に画面をのぞき込んで来た。
「ねぇ、このホーム画の人誰?」
冷や汗が出た。とっさにスマホを隠して「あ、え・・・っと・・・」と焦っていると、
「あ、ごめんね。勝手に見ちゃって。言いたくなかったらいいんだよ」
と優しく言ってくれた。でもその表情が傷ついているように見えて、私はハッとした。
友達の中にもジャニーズが好きな子はいるけど、私が2次元が好きだったときもバカにしてくることは一度もなかった。ジャニーズを好きな子は毎日楽しそうでキラキラしてる人が多かったから、卑屈な私がジャニーズを好きになる資格なんてないと勝手に思い込んでいた。
そう、きっとジャニヲタを敵視していたのではなく、羨ましかったのだと思う。
「ジャニヲタ=リア充」「二次元ヲタク=根暗」のイメージを刷り込んでいたのは多分私自身だ。
私の勝手な思い込みで、好きなものを好きと言えずに友達を傷つけるなんて、あまりにも愚かすぎる。こんなことで友達との関係に溝をつくりたくない。
「ごめん、実は私、最近ジャニーズWESTにはまってさ。この画面の子は重岡大毅くん。なんかジャニーズ好きになったの自分でも意外すぎてなかなか話せなくてさ・・・」
勇気を出して言った。その友達は、
「え!そうなんだ~!WEST面白いもんね~。私は流星くんがかっこいいと思う!」
と言ってくれた。
あぁ、こんなにシンプルなことだったのか。
好きなものを好きと言う。
アニメが好きだった頃だって、その素晴らしさを友達に語って聞いてもらっていたじゃないか、それがジャニーズWESTになっただけ。それだけ。
ジャニヲタとか二次元ヲタクとか境界線を引く必要はないんだ。
それから、母親にも謝った。「今までジャニヲタになったのバカにしてごめん」ということと「山PじゃなくてジャニーズWESTにはまっちゃってごめん」ということ。
すると母親は笑顔で
「全然いいよ!むしろお母さんは嬉しいよ。あんたがアイドルとはいえ現実に存在する男を好きになれてさ。いいじゃん、自分の好きになった人を応援して元気もらえばさ。」
と言った。機嫌が悪くなるかと不安に思っていたが、男性が苦手だった私が男性アイドルを好きになったことを喜んでくれた。
そうか、ジャニーズはつらい毎日を送る上での活力になってくれるのか。カッコイイパフォーマンスを見るだけじゃなくて、その人の人間性や生き様に刺激を受けて、そしてその人に応援している気持ちを伝えて、お互いに支えあって成長することができるのか。だからジャニヲタはみんなキラキラして見えるんだね。
❝よかった、ジャニーズを好きになれて。そんな自分を受け入れることができて❞
周りの人のおかげで自分の中のステレオタイプを取り払い、ようやくそう思えるようになった。
それからというもの、私はジャニーズWESTが好きだということを機会がある限り、堂々と胸を張って伝えるようになった。
もうあの頃にような躊躇いはない。むしろ、こんなに素敵なグループがいるのだとアピールをするようにまでなった。
こうやって、「好き」を声にしていれば、自然と「私も好きなんだ!」と言ってくれる人が現れて、一緒にライブに行くジャス民の友達もできた。冒頭のように、ファンになったことを連絡してくれる人までいる。職場でも「昨日ジャニーズWESTの子がドラマでてたね」「24時間テレビに出るんだね。よかったね。」と声をかけてくださる。話題を振るのが苦手な私にとって、それはとてもありがたいことだ。
―好きなことにはとことん素直になった方がいい―
これが、ジャニヲタになった私が最初に学んだことである。
それから、「偏見を持ちすぎると結局自分の首を絞めることになる」ということも。
自分が生きていくための活力をもらえるなら、別に何を好きでいたっていいじゃないか。そこに優劣なんてない。好きなものに誇りをもって、周りからの評価を気にしないことが大切だ。
***
ジャニーズWESTは、私のようにジャニーズに全く興味がなかった人にこそハマるグループだと思う。作りこまれたアイドル像ではなく、ありのままの等身大の姿をファンにみせてくれるから、人間味がある。アイドルは手の届かない格別の存在というイメージを覆し、私たちと同じくつらい日々を乗り越えている人間なんだと思わせてくれる。だから、彼らがくれる言葉は心に馴染み、自然と勇気が出てくる。
私はジャニーズWESTと出逢うまでは、つらいことに対面した時は現実から一時的に逃げることを繰り返していた。でも今は、同じ現実を生きている彼らにパワーをもらって、つらさと向き合うことが少しずつできるようになってきた。
面白さとカッコよさのギャップ、高いパフォーマンス力、メンバー同士の家族のような関係性、個々のスペックの高さ、ポテンシャルの高さ、ジャス民やスタッフ・家族を大切にしているところ・・・・
世間にまだ知られていない魅力がたくさんある。どうかもっともっとたくさんの人に届いてほしい。